アトピー性皮膚炎



[病態生理]


アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)とは、皮膚角層のバリアー障害によって持続的なアレルゲンの皮膚への進入が繰り返され、最終的にアレルギー感作が成立して発症する病気と考えられています(図1)。


保湿について
一時期、アトピー性皮膚炎発症前に毎日保湿をすると、バリアが改善されアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症が抑えられるとされていましたが、現在ではむしろ効果がないという報告が多いようです。当院でも、アトピー性皮膚炎予防のために保湿を積極的にすることは勧めていません。

[アレルギーマーチ]


小児アトピー性皮膚炎を不十分に治療すると、その後食物アレルギー、喘息、鼻炎と次々にアレルギーを併発していきます。これをアレルギーマーチといいます。



アレルギーマーチの機序として二重抗原暴露仮説が提唱されています。小児アトピー性皮膚炎患者の湿疹部位から、食物アレルギーの元になる成分が埃に混じって体内に入り、食物アレルギーを起こし、さらにダニや花粉の成分が入り喘息や鼻炎を引き起こしていきます。

[治療]


アトピー性皮膚炎治療薬の変遷


アトピー性皮膚炎の治療薬は、2018年の生物学的製剤の出現により、重症アトピー性皮膚炎でも長期寛解維持を安全に行える時代となってきました。
当院は、福井県のクリニックでは唯一の分子標的薬認定施設であり、上記すべての治療を行うことができ、個々人に最も適した治療を選択します。

1)計画的外用療法(プロアクティブ療法)



計画的に外用療法を行うことで、寛解状態に導きながら外用を漸減していく方法です。皮疹の状態や血液データより、外用レベル、1日の外用量、外用頻度を初期設定し、絶えず状況に応じて再設定ていきます。そして、最終的に完全寛解(治癒)を目指します。

特に小児では、この治療により寛解状態(皮疹ゼロ)に至ることは、食物アレルギーなどのアレルギーマーチを予防するために大切です。

2)紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト、エキシマレーザー)

外用療法だけでは治療困難な痒疹や苔癬化局面(分厚くなった湿疹)などに特に有効です。安全性が高くて効果的ですが、生物学的製剤との併用で効果が増強されます。特に、小児の生物学的製剤治療の初期(治療開始から3ヶ月以内)に併用すると非常に効果が出ます。



全身に広範囲に広る病変は全身照射型ナローバンドUVBで、限局した難治性病変はエキシマライト&レーザーで治療します。

3)生物学的製剤

プロアクティブ療法でも寛解できないアトピー性皮膚炎に対して、最も安全に寛解状態を得ることができる治療薬です。肌質が改善して、綺麗な肌になるだけでなく、アトピー性皮膚炎に合併するひどいニキビや円形脱毛症も改善します。



導入にあたっては、当院監修資材を使用して、治療法について詳しく解説します。



生物学的製剤とプロアクティブ療法を併用することで、速やかに深い寛解状態が得られます。それにより、治療後も長期に寛解を維持することが可能です。

4)その他の治療

①免疫抑制剤(シクロスポリン)
重症アトピー性皮膚炎のコントロールに使用します。比較的低価格で、効果的に治療することができます。最長3ヶ月しか保険で使用できない点が欠点です。内服中止後の再燃が早いため、当院では必ずプロアクティブ療法と併用します。

②JAK阻害剤(オルミエント、リンボック、サイバインコ)
重症アトピー性皮膚炎のコントロールに使用します。効果は非常に高いのですが、高額であることや感染症等の副作用のため定期的な検査が必須であることが欠点です。

[学会講演]


アトピー性皮膚炎の講演を全国各地で行なっています。主な講演は当院のブログを参照してください。